内視鏡手術

┇ 内視鏡手術

 従来の外科手術では大きな切開で開胸・開腹下に行ってきていました。その結果、術後の傷の痛みや腸管の蠕動の遅延が原因で、離床が遅れて癒着性腸閉塞などの術後合併症が多発していました。
  内視鏡外科手術は腹腔内に内視鏡を挿入し、二酸化炭素の送気により腹腔内にスペースを広げ、5〜10mmの切開創からポートを挿入し、色々な鉗子や止血用のデバイスを用いて手術をするやり方です。
  内視鏡外科手術の登場より、術後の痛みが少なく、腸管の蠕動開始も早くなりました。その結果、早期離床、早期退院、早期社会復帰が可能となりました。
  さらに、ハイビジョンカメラなどの使用により、従来は人の目で遠くから見ていた解剖が何十倍も大きく細かく見えるようになり、手術の技術が飛躍的に向上しました。

┇低侵襲手術

  手術の低侵襲の定義は
1)一般的に合併症の少ない胆嚢摘出術などの手術では入院日数を短くして早期退院・早期社会復帰となること。 2)合併症の多い手術では、腹腔鏡手術のメリットを生かし、手術合併症をできるだけ少なくする。代表的なのものでは術中出血量の大幅な減少や術後腸閉塞の消失などです。 3)併存症で手術の適応とならない場合などがあります。拡大視野効果を生かした神経温存手術などによる臓器機能の温存などがこれに相当します。食道癌の気管周囲の剥離や直腸癌手術での自律神経温存手術などです。こういった手術は開腹手術での肉眼による手術ではまず不可能です。

┇ 完全内視鏡手術

 私どもは内視鏡手術の安全管理をしながら、次第に適応範囲を拡大してまいりました。その結果、肝臓や膵頭部を除く外科領域はすべて内視鏡外科手術を施行するようになり、平成13年頃には、その実施率はほぼ100%に達しました。  次のステップとして平成16年に始めた完全鏡視下手術は、切除した腸管の再建術を含めた全ての手術を腹腔内・胸腔内で行う内視鏡手術です。当時は全国的にも取り組む施設がほとんど無く、現在でも鹿児島で行っている施設は当院のみです。  完全内視鏡手術は開胸・開腹手術や小切開の内視鏡手術に比べて傷がほとんど無く、QOLが飛躍的に改善します。早期退院や早期社会復帰が可能になるだけでなく心理的負担の少ない外科手術の最終的な完成形とも言える手術方法です。

┇ 完全内視鏡手術 胃切除術の手術創

┇ 完全内視鏡手術 大腸切除術の手術創

┇ 術後包交

  従来の開腹手術では術後にドレーンと呼ばれる管を腹腔内に挿入し、昼夜問わずガーゼ交換をしていました。このために、離床が遅くなっていました。
  内視鏡手術では細かい手技が可能であるために、手術中の出血がほとんど無く、基本的に細い閉鎖式のドレナージで充分です。このために毎日包交する必要が無くなり、患者様にとっても職員にとっても負担が少なくなり、早期離床が可能となりました。

┇ 内視鏡専用手術室

  当院では平成20年11月に内視鏡外科専用手術室を鹿児島で初めて完成しました。健翔会病院新築移転後も同じコンセプトになっています。手術前室、機材室、中央材料室からなる広いスペースを確保しています。手術室には、あらゆるポジションを取ることが可能で、素早い体位確保が特徴の内視鏡専用手術台、長時間の手術でも目が疲れないLED無影灯、ハイビジョン液晶の天井吊り下げ式モニターを装備しています。モニターには手術中の繊細な映像を表示するだけでなく、術中内視鏡の映像や術前検査画像などを表示することが可能です。また、すぐに記入できるレセプト用のパソコンを備えています。各種デバイスは、最小限のラックに収まって使いやすくなっており、電気機器が多いためにコンセントや吸引などの配管の位置についても工夫しています。

┇ 在院日数

 例えば胃癌に対する代表的手術である腹腔鏡補助下遠位側胃切除術について術後の経過を比較してみます。  従来の開腹手術では、退院するまでに約2週間以上を必要としました。術後癒着性腸閉塞などの合併症でさらに退院が遅れる症例も存在しました。  腹腔鏡補助下遠位側胃切除術で鏡視下手術の利点を活かした手術を施行すると、術後7〜10日前後で退院が可能となります。  我々が行っている完全内視鏡手術では更に短く4〜5日で退院が可能です。

当院の主な完全鏡視下手術の術後在院日数(最短)

虫垂

急性虫垂炎

腹腔鏡下虫垂切除術

術後1日

胆嚢

胆石症・胆嚢炎・胆嚢ポリープ

腹腔鏡下胆嚢摘出術

術後1日

総胆管

総胆管結石

腹腔鏡下胆管切石術

術後7日

鼡径

鼠径ヘルニア

腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術

術後1日

食道

食道裂孔ヘルニア

腹腔鏡下噴門形成術

術後4日

 

食道アカラシア

腹腔鏡下食道アカラシア手術

術後4日

 

食道癌

胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術

術後7日

胃腫瘍

腹腔鏡下胃部分切除術

術後4日

 

胃癌

腹腔鏡下遠位側胃切除術

術後4日

 

胃癌

腹腔鏡下近位側胃切除術

術後10日

 

胃癌

腹腔鏡下胃全摘術

術後10日

小腸

術後癒着性イレウス

腹腔鏡下癒着剥離術

術後7日

 

小腸腫瘍

腹腔鏡下小腸切除術

術後4日

大腸

大腸

腹腔鏡下結腸切除術

術後4日

 

大腸癌

腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術

術後4日

直腸

直腸癌

腹腔鏡下直腸切除・切断術

術後7日

脾臓

脾腫

腹腔鏡下脾摘出術

術後4日

副腎

副腎

腹腔鏡下副腎腫瘍摘出手術

術後4日

腎癌

腹腔鏡下腎摘術術

術後4日

気胸

胸腔鏡下肺縫縮術

術後4日

 

肺腫瘍

胸腔鏡下肺切除術

術後4日

 

肺癌

胸腔鏡下肺悪性腫瘍切除術

術後7日

縱隔

縱隔腫瘍

胸腔鏡下縦隔腫瘍切除術

術後4日

*術後在院日数については年齢や併存症の有無など患者さんの状態で異なります。

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